感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)等の一部改正について

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律

公布:平成18年12月8日(平成18年法律第106号)
施行:平成19年6月1日

本改正感染症法は主に次の3つの柱からなる。
  1. 生物テロも未然の防止の必要性から、これまでは研究者の自主管理であった病原体等の管理体制が確立された。
  2. SARSの終息(WHO)など感染症をめぐる環境の変化から、感染症法の分類が見直された。
  3. 結核対策における見直しの必要性から、結核予防法が廃止され感染症法へ統合された。

A.病原体等の管理体制の確立

病原性、国民の生命及び健康に対する影響に応じて、新たに病原体(特定病原体等)が一種から四種に分類され、所持、輸入、譲渡等の禁止・許可・届出や保管・使用・滅菌等の基準が設けられた(図1)。また、病原体の分類ごとに使用施設や保管の物理的封じ込めなどの使用基準が定められた(表1)
  • 第1種病原体等: エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘そうウイルス、南米出血熱ウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスが含まれる。これらの病原体の所持、輸入、譲り渡し、譲り受けが禁止(厚生労働大臣が指定する施設における試験研究のための所持等は除外)された。
  • 第2種病原体等: SARSコロナウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ペスト菌、ボツリヌス菌等の病原体およびボツリヌス毒素が含まれる。これらの病原体等の所持、輸入、譲渡には許可が必要である。また、譲り渡し、譲り受けは第二種病原体等許可所持者間でのみ可能である。
  • 第3種病原体等: Q熱コクシエラ、狂犬病ウイルス、多剤耐性結核菌、および、政令で定められる20種の病原体を所持、輸入した場合は、事後7日以内に厚生労働大臣に届け出なくてはならない。
  • 第4種病原体等: インフルエンザウイルス(H2N2)、鳥インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、結核菌(多剤耐性結核菌を除く)、コレラ菌、腸管出血性大腸菌等12種、および、政令で定められる日本脳炎ウイルスなど4種がふくまれ、基準の遵守が義務付けられている。
これらの病原体等の分類は、従来からの感染症の分類(下記2参照)とは内容を異にしていることに注意が必要である。

B.感染症分類の見直し

(1)南米出血熱は1類感染症に、SARS、結核は2類感染症に、コレラ等は3類感染症に位置づけられた(表2、感染症の分類)
  • 1類感染症: エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
  • 2類感染症: 急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る)
  • 3類感染症: コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
  • 4類感染症: E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、そのほか政令で定めるもの。
  • 5類感染症: インフルエンザ(鳥インフルエンザを除く)、ウイルス性肝炎(E型肝炎、及びA型肝炎を除く)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、そのほか省令で定めるもの。
  • 指定感染症:インフルエンザ(H5N1)についてはヒトからヒトへ感染することを前提として、指定感染症として政令指定され、現行の4類感染症の規定に加え2類感染症に準じた規定を準用する(平成20年6月11日まで;平成19年政令第175号、同厚生労働省令第88号)。
(2)コレラ及び黄熱は検疫法の検疫対象から除外された。今回の改正を踏まえると、検疫対象は、感染症法1類感染症(前述(1))、インフルエンザ(H5N1)、デング熱、及びマラリアとなる。

C.結核予防法を廃止し感染症法に統合

(1)人権を尊重した手続きに基づく法的措置を可能とするために、結核を感染症法・2類感染症に位置づけた。
(2)結核固有の対策として必要な定期健康診断、通院医療等は感染症法に、定期予防接種は予防接種法に位置づけられた。
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