
部会長あいさつ
令和7・8年度 部会長
京都大学大学院薬学研究科
石濱 泰
このたび、日本薬学会・物理系薬学部会の部会長を拝命いたしました。長い歴史の中で本部会を牽引してこられた諸先輩方、とりわけ直前の部会長が築かれた力強い基盤に深く敬意を表するとともに、その発展をさらに加速させるべく全力で取り組む所存です。
物理系薬学は、薬学の根幹を支える基盤科学として、物理化学・分析化学・放射化学・製剤学・錯体化学・構造生物学・イメージング・ドラッグデリバリー・情報科学など、多様な学問領域から構成されています。これらの領域で生まれた革新的な計測技術や解析手法は、生命現象の理解、疾患機序の解明、創薬標的の探索、分子構造の決定、薬物動態の把握、製剤化・品質管理に至るまで、現代の医療・創薬を支える不可欠な知の源泉となっています。
近年、質量分析、X線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡、超解像度顕微鏡などの技術革新により、かつては解析が困難であった巨大複合体や膜タンパク質の構造が次々と明らかになり、分子レベルの理解に基づく合理的創薬が現実のものとなりました。さらに、光遺伝学や光免疫療法など、物理系薬学の知が新たな生命医療技術へと展開する例も増えています。こうした学術の広がりと深まりは、まさに本部会が担う領域のダイナミズムそのものです。
一方で、AI・データ科学の急速な進展により、物理系薬学は新たな局面を迎えています。高度化する計測技術から生まれる膨大なデータをいかに統合し、生命現象や薬物作用を体系的に理解するか。これは、次世代の薬学を形づくる上で避けて通れない課題です。本部会としても、計測科学・情報科学・データインフラを横断する新しい連携を促し、AI時代にふさわしい物理系薬学の姿をともに描いていきたいと考えております。
物理系薬学部会では、従来からの5つの学術集会に加え、若手研究者が自由に議論し、新しい発想を育む場づくりをさらに強化してまいります。学生や若手が「物理系薬学の面白さ」に触れ、自らの手で新しい現象を切り拓く喜びを感じられるような環境を整えることも、部会長としての重要な使命と考えております。
物理系薬学が持つ多様性と創造性は、薬学の未来を切り拓く力そのものです。会員の皆様とともに、本領域の発展と若手育成をさらに推進し、健康・医療・創薬に貢献する学術基盤を築いていく所存です。今後とも、皆様の温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

